ビル設備の全体像 空調・電気・衛生・防災・中央監視をひと目で
📘 この記事でわかること
- ビルに入っている「建築設備」って何があるの?
- 空調・電気・衛生・防災・中央監視、それぞれの役割
- 計装・自動制御業界で扱うのはビルのどの部分?

ビル1棟の裏側は意外と複雑
今日は全体の地図を頭に入れてもらうよ
ここを押さえておくと、これから個別の記事を読むときに迷子にならずにすむよ
こんにちは、電ラビです
計装・自動制御の業界に20年以上いるウサギです
ビルに毎日入っていても、ふだんは意識しない「裏方の機械たち」
今回はそのビル全体の仕組みを、地図を描くように整理して解説します
目次
「建築設備」ってなに?
建築基準法では、建築設備を次のように定めています
「建築に関する電気・ガス・給水・排水・換気・暖房・冷房・消火・排煙・避雷針などの設備」
つまりビルの”体”が建物本体だとすると、建築設備は”内臓と血管”にあたります
どれか1つが止まるだけで、ビルは機能しなくなります
現場では建築設備をざっくり5つに分類して扱います
| 区分 | 主な役割 |
|---|---|
| ① 空調設備 | 温度・湿度・気流・空気の清浄度を保つ |
| ② 電気設備 | 受電・変電・配電・非常用電源を担う |
| ③ 給排水衛生設備 | 水道・お湯・排水・消火・ガスを供給 |
| ④ 防災・防犯設備 | 火災感知・避難誘導・不法侵入対策 |
| ⑤ 中央監視設備 | ①〜④を1か所で見る・動かす |
計装・自動制御の業界がメインで扱うのは、①空調設備と⑤中央監視設備
②電気設備とも深く関わります
① 空調設備:温度と湿度を支配する
ビル空調の仕事は、「温度・湿度・気流・清浄度」の4要素を快適な範囲に保つこと
これを”空気調和”と呼びます
3000㎡以上のオフィスビルには建築物衛生法(通称ビル管法)が適用され、守るべき最低ラインが法律で決められています
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 乾球温度 | 17〜28℃ |
| 相対湿度 | 40〜70%RH |
| 気流 | 0.5m/s 以下 |
| 浮遊粉塵 | 0.15mg/m³ 以下 |
| 一酸化炭素(CO) | 10ppm 以下 |
| 二酸化炭素(CO₂) | 1000ppm 以下 |
これを実現するための主な機器は
- 熱源機器:冷凍機、吸収式冷温水発生器、ボイラ、冷却塔
- 空調機器:空調機(AHU)、ファンコイル(FCU)、VAV
- 搬送機器:ポンプ、ファン(送風機)、ダクト、配管
- 自動制御機器:温湿度センサ、調節器、自動制御弁
これらが連携して、ビル全体の空気を整えています
② 電気設備:建物に電気を届ける
電力会社からの高圧(3相6600V)を受電し、ビル内で使える100Vや200V、400Vなどに変圧して配電するのが電気設備の仕事
- キュービクル式高圧受変電設備:屋上や機械室にある金属ボックス、多くのビルで標準採用
- 動力盤:ポンプ・空調機ファンなど動力機器の起動停止を担う、使用電圧は通常3相200V
- 分電盤:照明・コンセントに100V、200Vを配る、単相3線式が主流
- 自家用発電機:停電時に非常用電源を供給、消火用や保安用の電力を守る
- 蓄電池設備:短時間の電源切替や非常用バッテリー
計装側からは、動力盤の制御回路(起動停止・インタロック)と、電気設備から中央監視への信号の取り合いが主な接点です
③ 給排水衛生設備:水まわりすべて
水道・お湯・排水・消火・ガス、これらを総称して「給排水衛生設備」と呼びます
- 給水設備:受水槽、高置水槽、給水ポンプ
- 給湯設備:給湯ボイラ、貯湯槽、循環ポンプ
- 排水設備:汚水(トイレ)、雑排水(厨房・洗面)、雨水排水
- 消火設備:消火栓ポンプ、スプリンクラー
計装側の関わりは主にポンプの発停信号、水位監視、異常警報の中央監視への伝送
空調ほどガッツリ制御することは少ないですが、見落とせない領域です
④ 防災・防犯設備:命を守る
災害や侵入から人を守るための設備
法規で設置が義務づけられているものが多く、点検のルールも厳密です
- 自動火災報知設備:熱感知器・煙感知器・発信機・受信機
- 防火防排煙設備:防火戸、排煙口、排煙たれ壁
- ガス漏れ火災警報設備:検知器・中継器・受信機
- 非常用照明・誘導灯設備:避難路・非常口の表示灯
- 防犯設備:赤外線センサ、カードリーダー、電気錠、鍵管理ボックス
火災が起きたときに空調機を止めて排煙を立ち上げる”連動制御”は、計装側と防災側の境界にある重要な仕事
ここが崩れると人命に関わります
⑤ 中央監視設備:全設備の司令塔
①〜④の設備を1か所で見る・動かすための装置
ビル自動化(BA、Building Automation)の中核です
- 中央監視室のPC画面で、ビル全館の温度・湿度・機器の状態が一覧できる
- 異常が発生するとその場で警報が鳴る
- 遠隔からポンプを停止、空調のスケジュール運転、温度の設定変更ができる
- データを蓄積して、運転記録や省エネ分析ができる
中央監視装置は“センター装置”と”リモート装置”に分かれた階層構造で構成されます
センター装置がビル全体を見渡し、リモート装置が各機械室で末端の機器と信号をやりとりする
この上下関係が分かると、BA業界の図面が一気に読めるようになります(詳しくは別記事で)
計装屋はどこを担当する?
建築設備のうち、計装・自動制御業界が直接関わるのは主に「空調設備の自動制御」+「中央監視設備」です
- 温湿度センサの取付・配線・校正
- 調節弁の開度調整・リンケージ調整
- 動力盤と制御盤の信号のとりあい
- 中央監視装置のポイント登録・グラフィック作成・ロジック組み
- 試運転調整、トラブルシュート、年次点検
他の設備(電気・衛生・防災)とは”信号の取り合い”という形で必ず接点があり、どの設備の知識も現場で必要になります
だから計装屋は”ビルの何でも屋”と言われることが多いんです
よくある質問
Q. ビル管理会社と計装会社は何が違うの?
ビル管理会社はビルの毎日の運用(点検・清掃・見回り)が主
計装会社は自動制御システムそのものの設計・施工・点検・修理が主
共同作業になる場面は多いですが、担当範囲は分かれます
Q. 未経験でもビル設備の仕事にはいれる?
入れます
電気工事士から入る人、設備系の学校からの新卒、小売や建築の異業種からの転職、さまざまなルートがあります
計装・自動制御は専門性が高いぶん未経験でも実力次第で評価される業界です
Q. 5つの設備、全部覚えないとダメ?
最初は”他の設備とうちは信号でつながっている”くらいで十分
現場で壊れた時に隣の設備が絡んでくることがあるので、担当外でも仕組みは知っておくと役立ちます
まとめ
- 建築設備は空調、電気、衛生、防災、中央監視の5区分
- 空調の目標は温度・湿度・気流・清浄度の4要素
- 電気設備は受変電・動力・照明・非常用発電がメイン
- 中央監視はビル全体を1か所で見るための司令塔
- 計装屋は空調制御+中央監視を主戦場に、他設備とも必ず連携する
ビル1棟は”小さな街”のような規模
5つの設備が互いに信号をやりとりして、表からは見えない場所でずっと動き続けています
次からの記事では、空調の熱源機器、自動制御機器の世代交代、中央監視装置の中身、といったテーマをひとつずつ深掘りしていきます
この地図を頭に置きながら読んでみてください
📚 さらに学びたい方におすすめの書籍
📕 「建築設備の自動制御入門」
ビル設備の自動制御を体系立てて学べる入門書です、現場初心者でも無理なく読み進められる構成で、空調・熱源・搬送機器の制御ロジックがひと通り押さえられます
計装・自動制御の世界に踏み出す最初の1冊として、長く手元に置いておける良書です
